ウイングばね式
iやはり軸箱を軸箱守(=ペデスタル,pedestal)により支持する方式で摺り板を介して軸箱は上下に摺動する。一次ばねは軸箱体の下側に両翼を広げたようなばね受け部に載せられていることが特徴である。この形態よりウイングばね式との呼び名が生まれている。前項の軸箱直上にコイルばねを配する軸ばね式と比較して,コイルばねを取り付ける位置が下げられる為に相対的に長いばねを使うことが可能で,ばねを柔らかくすることが出来て乗り心地の改善が図られている。やはり構造が簡単な為,長年国鉄で好んで使用された方式である。以下にウイングばね式軸箱支持装置の組み立てを紹介します。



左上はウイングばね式の軸箱体です。軸箱の両側に軸ばねを受ける受けが羽(=wing)のように作られています。この軸箱体を輪軸に装着した状態が右上の状態です。

左上は軸箱体のばね受けに,ばね座,防振ゴムそしてばね座の順に組み立てた状態です。右上は防振ゴムといい軸ばね(この場合は金属製コイルばね)では抑えられない高い周波数の振動を減衰させる為にコイルばねと直列に挿入される。

左上は軸箱体の両側にコイルばねを装着した状態です。良く観るとコイルばねは互いに逆巻きとなる2個のコイルばねが組み合わさっていることが判ります。互いに逆巻きとすることにより内・外のコイルばねが噛み合うのを防止しています。また2重にして用いることにより限られたスペースで出来るだけ大きなばね容量が得られるように工夫しています。右上はばね座のかずかずです。

左上はコイルばねの上にさらにバネ座を載せた状態です。これで軸箱体の組み立ては終わりです。右上は完成した軸箱体に台車枠を装着する瞬間です。大きく切れ込んだ部分(この形をpedestalという)が軸箱体の中に差し込まれてゆくことがお解かり頂けると思います。

左上は軸箱守(=pedestal)のアップです。内側に灰色に見える板がネジで固定されていることが判ります。これはスリ板といって軸箱守と軸箱体とが擦れ合う部分の保護の為に使用されます。右上はそのスリ板のアップです。
スリ板はレジンモールド法により製造されており,熱硬化性樹脂(フェノール系)と摩擦調整材などを混合した摩擦材組成物を、所望形状の素押成形金型に入れて予備的に成形し、さらに、この予備成形体を、最終的な製品形状にするため、焼成金型に入れて加熱加圧しながら硬化させるものです。国鉄では耐磨レジンと呼ばれていました。

しかしこんな薄い樹脂板が軸箱守式軸箱支持装置の”要”であることに今更ながら驚かされます。軸箱守式軸箱支持装置の台車を見かけたら,皆さんもスリ板のことを思い出して下さい。

左上は軸箱体を横からみたものですが,軸箱守(=pedestal)が入るスリットが設けられていることが判ります。軸箱守のスリ板が軸箱体のスリット部を挟み込んで軸箱を支持します。右上は軸箱守により軸箱体が挟み込まれた状態で,皆さんがよく見かける状態です。

ウイングばね式軸箱支持装置を採用した国鉄TR47台車





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