IS
東海道新幹線試作車1000系用台車DT9004にて試験された方式で,ミンデン式軸箱支持装置をベ−スとして開発された。その後改良を加えて量産車0系のDT200へと継承されている。IS式の名称は考案者の石沢應彦氏,島隆氏のイニシャルをとったもの。
IS式は軸箱体に固定された板ばねを前後方向へ配し(下図青色部分),その端をISゴム(下図緑色部分)を介して台車枠に取り付けたもので,軸ばねはウイング状に装着(下図藤色部分)されている。相対的にミンデン式は剛支持過ぎて板ばねへかかる応力が高過ぎる問題点があり,ゴムを介在させることにより幾分剛性を下げることに成功した。また,日本国の英知を結集した新幹線の高速台車に世界で実用されているミンデン式を採用することに躊躇いがあったとも言われている。


左上の写真は軸箱体で軸箱体前後方向に板ばね(国鉄⇒JRでは支持板と呼んでいる)を固定するボルト穴とセレーション加工が施されている。右上の写真は支持板固定部のアップで写真手前側のツルツルした部分は摩擦材を敷く部分で,奥のセレーションは支持板のセレーションと噛合わせる部分で,各々機械加工で仕上げられている。また中央の大きな穴はばね殺しボルトを通すための穴です。さらに軸箱体上部に伸びている吊輪は安全つのと言い,台車側枠へ遊間を保って差し込まれ,万一支持板が折損しても大事に至らないように軸箱体を案内する役目と,検修時にクレ−ン等で台車を吊り上げても軸箱体が垂下しないように保持する役目とを併せ持っているものです。

左の写真は台車側枠上面より安全つのが差し込まれた状態を捉えたもので,上写真は安全つのと台車枠がピンでつながれた状態を捉えたものです。
左の写真は軸箱体と支持板(=板ばね)との結合部です。支持板先端部には8山のセレーションがきってあり軸箱体のセレーションと噛合わせたうえで,支持板押さえを介してボルトで固定されます。また中程の固定部にはセレーション加工は施されておらず,機械加工で平面仕上げされた部分に摩擦板と呼ばれるレジンモールド法で作られた板でサンドウィッチしたうえでウイング式軸ばね受けと共にボルトで固定されます。
左写真は摩擦板です。摩擦板で支持板をサンドウィッチする目的は,支持板の当該部分に応力がかかる為に,その応力集中を緩和すること及び当該部分の防錆である。
左写真は軸ばね組立品を下側から捉えたものです。下部ばね受けから出ている2本のボルトで摩擦板→支持板→摩擦板→軸箱体→回止めの順に縫って行き,ナットで固定します。真ん中のナットはばね殺し用のボルトで,この軸ばねは圧縮された状態となっています。
左写真は支持板取り付け部を軸箱体下側より覗き込んだものです。画面右側の小さめのボルトは支持板のセレーション部を縫うもので,右側の大きいボルトは摩擦板で挟みこんで,軸ばね受けと共に縫い付けているものです。

左写真は支持板で写真手前が台車枠への固定側で奥が軸箱体への固定側となっており,支持板の裏側から写したものです。支持板はばね鋼を熱処理したもので防錆の為に銅メッキを施してある。前項のミンデン式に比べて支持板の幅が広く台形状をしている。板厚も取付部を含めて均一(軸箱体固定側の一部にザグリ加工があるが)となっている。支持板中央部には前後方向に大きなスリットが切ってあり,万一支持板にクラックは生じてもスリット部で進行が止まるように工夫されている。

上写真は支持板の台車枠との取付部に挿入されるISゴムブッシュで,
IS式の要とも言うべき部品です。ISゴムブッシュは心棒と外筒(支持板取付腕)との間に2個の弧状のゴムを加硫接着したもので,ISゴムを左右対に接着したものをA型,上下対に接着したものをB型として区別し,前者を台車側枠内側取付用,後者を台車側枠外側取付用としている。
ISゴムブッシュ(A)台車側枠内側の支持板取付部に使用されるもので,ISゴムが前後方向対に接着されたもの。すなわちISゴムがある前後方向の剛性を高く,ISゴムのない上下方向の剛性を低く設定してある。 ISゴムブッシュ(B)台車側枠外側の支持板取付部に使用されるもので,ISゴムが上下方向対に接着されたもの。すなわちISゴムがある上下方向の剛性を高く,ISゴムのない前後方向の剛性を低く設定してある。
上左は支持板の台車側枠中央寄りの接続部で,上右は台車側枠外側寄りの接続部です。支持板がISゴムブッシュを介して台車側枠に接続されている様子が判ります。
上の写真は支持板,ISブッシュ組立品,台車側枠との接合部のアップです。支持板を摩擦板でサンドウィッチしたうえで,支持板取付腕で挟みます。これをボルトで縫いダブルナットで締付けます。ボルト頭にはチャンネル材状回り止め板を噛まし,ナット側にも回り止めワッシャを噛ませます。回り止めワッシャはナットを締付けた後ワッシャのツバをバールとハンマを使って折り曲げてナットの緩みを防ぐものです。軸箱体側と異なりセレーション加工は施されていません。
ISゴムブッシュ組立品と台車側枠との取付部は台車側枠側に設けたスリットにISゴムブッシュの心棒を嵌め込みボルトで固定します。余談ですが台車側枠側のスリットとISゴムブッシュの心棒は各々片側テーパとなっています。

上の写真は200系が履くDT201台車です。





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