片板ばね
軸箱体と台車側枠とを2枚一組の板ばねで接続し軸箱を案内する方式で1958年に東京芝浦電気製TT53台車でお目見えした。板ばねで軸箱を案内する為に摺動部や磨耗部が無く画期的な方式と考えられた。翌年の1959年国鉄では本方式を取り入れてDT900を製作しED6115で試用を行った。その結果を踏まえて1961年よりED72が履いたDT119,DT119A,TR100,TR100A,ED73が履いたDT119Bへと続くが,部品点数の増加や板ばねの信頼性等により打ち止めとなった。

軸箱体の内側寄りに設けた板ばね取付座と台車側枠に取り付けた板ばね取付座とを厚さ7mm幅150mmのSNCM鋼(Ni-Cr-Mo鋼)製の板ばね2枚(上図青色部分)を使って接続する。板ばね取付座と板ばねとの固定はズレ防止の為に六角平行打込みボルトによっている。軸箱体の外側寄りには万一板ばねが折損しても大事に至らないようにストッパが設けられている。すなわち台車側枠よりでた軸箱守取付脚(上図左側)と軸箱体は軸箱の動きを制限しないように空隙を保った状態で二本のボルトで固定されている。軸ばねはTT53台車がコイルばねを使用した以外はゴム(上図緑色部分は積層ゴムを表している)を使用している。

上の写真は板ばねと台車側枠との結合部です。台車側枠より伸びた脚にコの字型のばね板受けと呼ばれる部品を平行打込みボルトで固定します。板ばねはばね板受けの上下に各々三本の平行打込みボルトで固定されます。
上の写真は板ばねと軸箱体との結合部です。軸箱体の片側にはコの字型のばね板受が鋳出されており,ここに板ばねを固定するようになっている。固定方法はやはり上下各々3本の平行打込みボルトで行われている。
軸箱体の他端は板ばねが折損しても大事に至らないように安全ストッパが設けられている。
この安全ストッパの機構は台車側枠より下ろされた軸箱守取付脚と呼ばれる脚を軸箱体から鋳出された把持部で挟込むようになっている。把持部と脚との間には充分な空隙が設けられており,通常両者が接触することはない。さらに脚には二個の長穴が開けてあり,把持部から差込まれたボルト2本はこの長穴を通って固定される。

TT53とDT900台車に適用される安全ストッパの模式図。軸箱体から鋳出された把持部が軸箱守取付脚を挟み込む構造となっている。万一板ばねが折損した場合にこの安全ストッパにより軸箱を案内して大事に至らないようにする。 DT119系とTR100系台車に適用される安全ストッパの模式図。左図とは反対に軸箱守取付脚が軸箱体を挟みこむ構造となっている。

1958年東芝製30t凸型電気機関車が履くTT53台車。片板ばね式軸箱支持装置を我国で最初に採用したと考えられる。板ばねに無理な撓みが掛からないように軸ばねが斜めに挿入された珍しい形態を採る。
8404様よりご提供戴いた国鉄DT900台車の画像でED6115が履いていた試作台車。走行写真や斜めからの写真は幾つか見たことがあるが,真横から撮影されており細部までよく判る当該写真は言い尽くせないほど貴重な写真である。ED6115は1959年製で簡易台車装架方式の駆動機構を採用しており,歯車間距離を正確に保つ為に片板ばね式軸箱支持装置を採用したと云われている。また板ばねの撓みを抑制する為に軸ばねはコイルばねではなく防振ゴムを採用している。
国鉄DT119B台車。登場後まもなく板ばねが折損するトラブルがあったが,板ばねの製作方法に欠陥があることが判明し改良品と既存品とを2枚組みにしたものに付替えて運用についていたとの記録が残されている。その後板ばねの品質が安定したようで当初の設計どうりに戻されたようだ。軸ばねはやはり板ばねの撓みを抑制する為にコイルばねではなく角型の積層ゴムを使用している。
今回ご紹介させて戴いた片板ばね式軸箱支持装置は2枚の板ばねを使用しているが欧州では板ばね1枚を使用した片板ばね式軸箱支持装置がある。上手く取材できた時に是非ご紹介したいと思っている。





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